

精神科医、和田秀樹こころと体のクリニック院長
和田 秀樹(わだ ひでき)さんの著書
『70歳が老化の分かれ道』から
実践していきたい 「幸齢者mind」をお届けします。
目次
1 「散歩」が最適

70代の生活において、もう一つ大切なポイントが、運動機能の維持です。
まだ、70代であれば、
それなりに身体を自由に動かせる人が大多数ですから、
このタイミングを逃さないようにしましょう。
ここで、意識的に身体を動かしていたかどうかが、
80代になっても、
運動機能を長持ちさせることに大きく関わってきます。
これまで何度か述べましたが、
70代ともなると、意欲面での低下は避けられません。
行動することがおっくうに感じられ、
身体を動かすことも、自然と減ってきてしまいがちです。
だからこそ、意識して運動することが大切です。
ただ、70代の人にとっては、
あまり激しいものは避けたほうがいいでしょう。
ときどき、身体にいいと考えてか、
ものすごく無理をする人を見受けます。
一日中スポーツジムにいるような人や、
1日に20キロも走るような人もいましたが、
そこまでやるような人は、
体調のチェックを随時やりながら行ってください。
70代の場合は、負荷をかけすぎると、
身体が逆に弱ってしまうこともありますので、十分注意が必要です。
また、激しい運動は身体を酸化させて、老化を速めてしまうので、本当はゆるい運動のほうがお勧めです。
70代の人が日常的に身体を動かすということで言えば、
「散歩」が最適でしょう。
無理のない運動を定期的、継続的に行うことが大切です。
散歩であれば、手軽に自分のペースで、継続して行うことができます。
また、部屋の外に出て陽の光を浴びることで、
セロトニンの生成を助ける効果もあります。
セロトニンは活動意欲を増進し、精神的にも人を若々しくしてくれます。

2 激しい運動より、ゆっくりと身体を動かすもののほうがいい

日常の中でも、
運動機能を維持するちょっとしたヒントがたくさんあります。
たとえば、外出した際、駅や商業施設などで、つい階段を避けて、
エレベーターやエスカレーターを探したりしていないでしょうか。
そのようなときは、十分な安全を確保できるなら、
たまには老化防止と思って階段を利用しましょう。
それも、上り階段ではなく、下り階段こそしっかり歩いてください。
日本の公共機関などでは、
エスカレーターが1つしかないところがありますが、
そういうところに限って上りのエスカレーターしか設置されていません。
本来、高齢者にとっては、上り階段は時間がかかっても、
案外上れるものです。
逆に下りのほうが、筋力が弱ってくると、
怖くて歩くことができなくなります。
歳をとっても、弱る筋肉と弱らない筋肉があり、
階段の上り下りにおいては、
実は、下るときの筋肉のほうが先に弱るのです。
ですから、いつまでも自分の足で歩くことを目指すなら、
階段では、下りの練習をしたほうがいいのです。
足元を見ていればよくわかりますが、
下り階段をすたすたと下りられるということは、
足が若いと言うことなのです。
点頭の恐れがあるのならやめたほうがいいですが、
無理のない程度に、階段を利用して、脚力を維持してください。
散歩以外にも、
最近では、水中ウォーキングをやっている人もよくいますが、
これも、身体に負荷をかけすぎない、いい運動だと思います。
水中での運動は全身運動になりますし、
浮力がありますので、関節への負荷がかからず、高齢者にも安心です。
また、ゴルフやテニスなど、
若いときから続けているようなスポーツがあるなら、
引退などせず、できる限り続けるべきです。
「もう歳だから」と簡単に引退してしまうのは、もったいないことです。
70代になってから、新しいスポーツを始めるのは大変ですが、
以前からやっているものなら、
高齢になってからも楽しめ、身体への負担も少ないはずです。
ただ、日常的に行う運動であるなら、
激しい運動より、ゆっくりと身体を動かすもののほうが、
70代の人にとってはいいでしょう。
最近は日本でもやる人が増えているようですが、
太極拳などもぴったりです。
私も誘われてやったことがあるのですが、
簡単そうに見えて、なかなか奥の深いものでした。
太極拳はきっと、中国の高齢者に
大きな老化防止効果をもたらしているに違いないと思います。
3 今日の金言 和田 秀樹(わだ ひでき)
家にこもることなく、働くことが運動機能、脳機能の老化を遅らせ、
高齢者の寿命を延ばしている。

歳をとってからの働き方は、
若いときのものとは変えるべき。
お金や効率だけを求めるような働き方から、
自分の経験や知識を生かして、
誰かを助け、社会に役に立つということに
価値を置いていい。
とも述べられています。
10年以上ほぼ毎日、夕方1時間の「散歩」を継続しています。
活動意欲を維持と、運動機能の維持に努め、
まず、元気な70歳を迎えたいと思います。